太陽の表面温度は約6000℃です。6000℃の物体の表面からは、ある決まった強さのエネルギーが飛び出してきます。このエネルギーは、波の形をしています。(くにゃくにゃと折れ曲がった)波として私たちの目に見えるわけではありません。私たち人間は、これを光として見ることができます。いろいろな長さの波(エネルギー)が太陽から飛んできています。人間の目に見えるものも見えないものもあります。太陽から飛んできている波(エネルギー)のうち、一番強い部分は400ナノメートルから700ナノメートルの長さを持っています。1ナノメートルは1ミリメートルの百万分の一です。これより短い波や長い波の部分のエネルギーは弱くなっています。
人間は地球上で暮らしています。毎日の暮らしの中でまわりのいろいろなものを目で見て暮らしています。太陽が沈んでしまうと、暗くなってまわりのものが見えにくくなりますね。人間は太陽が出ているとき、つまり明るいときに、まわりのものをよく見ることができます。
はい、もうわかりましたね。太陽は光を届けてくれます。夜は太陽が出ていないので、私たちは自分で光(ライト、照明)を作らなくてはなりません。
そんなわけで、もっとも強く太陽から飛んできている波(エネルギー)を光として見ることができれば、太陽の恵みをあますことなく使えますね。400ナノメートルから700ナノメートルの長さを持つ波(エネルギー)を可視光線と呼んでいますが、人間の目がこの部分を光と感じられるのは、こういう理由だろうと考えられます。
もし人間が太陽系ではなくて違う恒星系の惑星で進化していたら、見える範囲は今のとは違っていたかもしれません。たとえば、太陽よりももっと青くて温度の高い恒星系で進化したとすれば、紫外線(400ナノメートルより波が短いエネルギー)を見えるようになっていたと思います。紫外線が今の地球よりも強く飛んでくるからです。
鳥や虫など、空を飛ぶ動物には、紫外線を光として見ることができるものもいます。花の蜜など食べ物を探すうえで、紫外線が見えたほうが都合がいいことがあるからといわれています。
一方で、人間の眼には紫外線は有害です。人間の眼の構造は、紫外線が眼の奥(網膜)に入りこまないようになっています。見る必要がないものは見えないようにしているというわけですね。
赤外線にはいろいろな種類があって、700ナノメートルよりも少し長くて目には見えない部分(近赤外線)や、8000~14000ナノメートル(私たちの身の回りに存在している物体の表面温度ですと、このくらいの長さの波(エネルギー)が出ています)というようなとても長い波を持つ赤外線(熱赤外線)もあります。太陽よりも赤くて温度の低い恒星系で人間が進化していれば、近赤外線が見えるようになっていた可能性があります。生物の情報処理能力には限界があるようです。仮に人間が近赤外線を光として見ようとした場合、紫外線に近い部分(紫として見えている部分)を見えないようにするか、細かな色の違いに気が付かないくらいに眼の解像度を落とすとかしていたことでしょう。
実際は近赤外線の部分が見えてありがたいといったことがなかったので、見えるようにはならなかったということでしょうか。
夜行性の動物など、光のとぼしい場所で活動しなくてはならない動物には、こうした熱赤外線を光のように検知して行動するものもいます。暗闇でネズミをつかまえるヘビなどがそうですね。