つくば市の中学生が学術論文を発表

カブトムシに関する学術論文を発表

つくば市内の中学校に通う岩本和真さんが、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の砂村栄力先生らと学術論文を発表しました。

この論文は、これまで研究事例のなかった日本のカブトムシのフェロモンについて誘引実験と検証を行ったもので、インターネット上でも公開され、誰でも読むことができます。

「餌を確保したカブトムシ雄成虫による同種他個体の誘因」

誘引実験を行う岩本さん(左)と砂村先生(右)

きっかけは「つくばこどもクエスチョンオンライン」

2020年、当時みどりの学園義務教育学校4年生だった岩本さんは、カブトムシを題材に自由研究をしており、「つくばこどもクエスチョンオンライン」に参加しました。このとき研究者として参加していた砂村先生は、岩本さんが書いた研究計画書に感銘を受けたそうです。

つくばこどもクエスチョンオンライン2020

岩本さんの研究計画書

その後も岩本さんから砂村先生へお手紙が届くなど、研究相談の交流が続きます。

岩本さんは2021年の森林総合研究所オンラインイベント「今年の夏休みは研究だ!令和3年度 夏休み子ども研究相談」にも参加し、その際砂村先生にした相談によって今回論文として発表することとなった研究が始まりました。

飼っているカブトムシから

岩本さんが2020年の夏に自宅の玄関外でカブトムシを多数飼っていたところ、毎朝野外のカブトムシが飼育ケースそばに集まってきたことから「これはカブトムシのフェロモンが関係しているのではないか」と思いつき、2021年の森林総合研究所オンラインイベント「今年の夏休みは研究だ!令和3年度 夏休み子ども研究相談」で、砂村先生に研究方法について相談をしました。

日本のカブトムシのフェロモンについては研究事例がなく、このときの相談だけでは具体的な実験方法などをアドバイスすることは難しかったため、砂村先生は、岩本さんとご家族を森林総研へ招いて一緒にトラップによる誘引実験を実施。この年(2021年)は十分な誘引実験はできませんでしたが、作成したトラップにカブトムシが集まってくることが確認できました。

その後、岩本さんが憧れの存在としていた山口大学のカブトムシ研究者である小島渉先生からもアドバイスをもらえることになり、2022年、2023年に本番の誘引実験を実施。この2年間で十分な回数の誘引実験ができ、オスと餌を一緒に入れたトラップに野外のカブトムシが誘引されてくるという結果に確信がもてたことから、2023年までを一区切りとして論文を書くことにしました。

2021年夏の実験開始から論文発表までは3年ぐらいかかったことになります。

憧れの小島先生(左)と岩本さん(右)の初対面

誘引したカブトムシたち

論文発表を終えて

砂村先生に研究から論文執筆中のエピソードを伺いました。

Q.特に印象に残っていることはありますか?

A.夕方のトラップの設置や朝の回収、次の実験を行うまでにトラップを洗浄する作業、たくさんのカブトムシに餌をあげる作業などはそれぞれ時間がかかり、岩本さんは大変だったと思います。また、カブトムシの成虫は夏にしか発生しないので、誘引実験ができる期間が限られ、実験系をくみ上げるための予備実験にはじまり本番実験で十分な量のデータをとるまで年数がかかったのも大変だったと思いますが、ねばり強くがんばったと思います。今回論文に書いた以外にも、取り組んでいてまだ十分データがとれていない実験もあります。しかし、このような大変な中、トラップにカブトムシが入っているとメンバー一同とても嬉しかったです。

Q.中学生で論文を発表するというのは稀有なことだと思いますが、今回サポートされていかがでしたか?

A.岩本さんは、毎年自由研究を市のコンテストやオリンパス主催のシゼコンに提出するため、しっかりとまとめていて、年度を追うごとに上位入賞するなどステップアップもしていました。こうしてブラッシュアップしてきた岩本さんの自由研究の文をベースに、私と小島先生で修正加筆して完成させた論文になります。もちろん、学術論文としては不足の部分が多く、大改訂とはなりましたが、論文の書き方を勉強してもらう良い機会になったのではないかと思います。

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